更新日: 2026-09-18
Webサービスの売却相場はどう決まるか。計算方法の考え方
「自分のWebサービスはいくらで売れるのか」は、売却を考え始めた人が最初に知りたいことです。結論から言うと、株式市場のような公開された相場は存在しません。ただし、評価額がどういう考え方で決まるのかという「計算の枠組み」は、中小企業のM&A実務の中で整理されています。この記事では、その枠組みを個人開発のサービスに当てはめる形で紹介します。
中小M&Aで使われる3つの手法
中小企業のM&Aでは、主に3つの算定手法が使われます。日本財務戦略センターの解説記事「M&Aバリュエーション」3手法の使い分けによると、次のように整理できます。
- 修正簿価純資産法:保有資産(現金・在庫・設備など)から負債を差し引く方法。事業の将来の稼ぐ力は反映されません。個人開発のサービスは目に見える資産が少ないため、単独で使うと過小評価になりがちです。
- マルチプル法(収益還元アプローチ):月間利益や年間利益に一定の倍率をかける方法。直感的で分かりやすく、実務でもっともよく使われます。
- DCF法:将来のキャッシュフローを予測して割り引く方法。事業計画を具体的に見積もれる場合に使われますが、個人開発の小さなサービスにはやや大がかりです。
同記事は「バリュエーションは正解を出す作業ではなく、売り手と買い手が合意点に近づくためのすり合わせ」と述べています。個人開発のサービスの売却でも、この考え方はそのまま当てはまります。
倍率(マルチプル)の目安をそのまま信じない
SaaS企業のM&Aでは「ARR(年間経常収益)の3〜10倍」という倍率がよく話題になります。TRANBIのコラム「SaaSのM&Aとは?ARRマルチプルの相場」は、この3〜10倍というレンジに加えて「個人開発のMicro SaaSは数百万円〜数千万円、本格的なBtoB SaaSは数億円規模」という目安を挙げています。
ただし、この数字は資金調達を受けた成長企業の事例を含むものです。継続率の高さ・成長率・解約率(チャーン)によって倍率は大きく変わるため、「自分のサービスにもそのまま当てはまる平均値」として鵜呑みにしないよう注意が必要です。
月間利益から考える簡易的な目安
会社単位の株式譲渡ではなく、Webサービス1つ・アプリ1つの売買では、より単純に「月間利益に一定の倍率をかける」形の目安が使われることが多くなります。panda-maの無料査定機能も、この考え方をもとに参考値を計算しています。倍率は利益が続いている期間や成長性によって変わるため、まずは自分の数字を入れて目安を見てみるのが早道です。
数字を入れて計算してみる
例えば、月間利益が3万円のサービスと、月間利益が30万円のサービスでは、同じ「マルチプル法」で計算しても評価額は単純に10倍にはならないことがあります。継続期間が長く、利益が安定しているサービスほど、買い手はより高い倍率を許容しやすくなるためです。逆に、始めたばかりで利益の実績が数か月分しか無い場合は、倍率が低めに評価される傾向があります。
このように、月間利益・継続期間・成長性という3つの変数が絡み合って評価額が決まるため、「自分の場合はどうなるのか」を知るには、実際に自分の数字を当てはめて計算してみるのが一番確実です。
相場を調べるもう1つの方法
複数のマッチングサービスで実際に成約した案件の情報を見比べることも、相場観をつかむ助けになります。同じジャンル・同じ規模の案件がどのくらいの金額で成約しているかを見れば、机上の計算式だけでは分からない「今の需要」が見えてきます。
高く見せようとする前にやること
評価額を少しでも上げたいと考えると、数字を良く見せる工夫に目が行きがちですが、買い手が最終的に信用するのは「検証できる実績」です。売上や利用者数の推移を、決済サービスやアクセス解析の管理画面から直接確認できる状態にしておくことのほうが、計算式の細かい違いよりも評価額に効いてきます。この点は、査定の前段階として押さえておく価値があります。
本記事は2026-09-18時点の公表情報にもとづいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言ではありません。個別の状況については弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。
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